光の領域で非情な決断がくだされたのとほぼ同じ頃。
アウロラは一人、いつものように神殿で闇に祈りを捧げていた。 ふと、自分以外の気配を感じて彼女は顔を上げる。 珍しくマルモがやってきたのかと思い、呼びかけようとしたその時、聞こえてきたのは場違いな幼い少女の泣き声だった。「……誰?」 思わずアウロラは立ち上がる。 闇の中で、前後そして左右を見やる。 最初かすかにすすり泣くようだったその声は、次第にはっきりしてくる。 しかし神殿の入口には衛兵が張り付いているので、子どもと言えども忍び込むのは不可能だ。 では、一体この声はどこから……。 その時、彼女の目前でぽうと光が灯り像を結ぶ。 そこに現れたのは、うずくまり泣きじゃくる一人の少女だった。 淡い茶色の髪から察するに、闇の領域の住人ではないのは明らかだ。「何故? あなたは一体……」 驚いて、アウロラは声を上げる。 それに応じるように、少女は顔を上げた。 尖った耳は、長命種の証。 そして少女は涙に濡れたすみれ色の瞳でアウロラを見つめた。 その可憐さに言葉を失うアウロラ。 一方少女は彼女を認めると、目を伏せ小さな声でこう告げた。「闇の巫女……申し訳ありません。私は、『私』を止めることができなかった」 謎めいた言葉に、アウロラは息を飲む。 それを意に介することなく、少女はさらに続けた。「このままではこの世界は壊れてしまう。勝手なこととはわかっています。でも、お願い。どうか……」「待ってください。一体どういうことですか? あなたは……」 アウロラの問いかけに、少女は目を閉じ頭を垂れる。 同時に純白の翼が少女の背中から現れた。 驚いたよ